第4巻 コオロギと栄養のはなし

豊富なたんぱく質

コオロギが食品として注目される理由は、豊富なたんぱく質。たんぱく質は、カラダをつくる基本となる栄養素です。筋肉や内臓などの組織・器官のほか、酵素やホルモン、免疫物質など、カラダを正常に保つのに必要な生理活性物質の源になります。体重60kgの成人であれば、1日に60gのたんぱく質を摂取することが推奨されています。

プロテインMIXイメージ

では、コオロギにはたんぱく質がどれくらい含まれているのでしょうか?生重量100gのコオロギには、約25g[1]のたんぱく質が含まれます。牛肉の赤身(もも肉)100gに含まれるたんぱく質の量が21g[2]ですので、コオロギにはたんぱく質がとても豊富に含まれることが分かります。コオロギを乾燥させてパウダーに加工すれば、たんぱく質の割合はさらに上昇します。FUTURENAUTのコオロギパウダーには、乾燥重量100gあたり67.9gのたんぱく質が含まれます。

コオロギパウダーは、「たんぱく質」がとても豊富なんだね!

たんぱく質の他にはどんな栄養が含まれているんだろう?

コオロギはほぼ丸ごと食べられるので、いろいろな栄養を一緒に摂ることができるんだ!

筋肉のエネルギーになるアミノ酸

たんぱく質を構成するアミノ酸レベルで見ると、コオロギにはヒトの体内で作ることができない必須アミノ酸が豊富に含まれています[3]。特に、運動時の筋肉でエネルギー源となるバリン、ロイシン、イソロイシン(BCAA(Branched Chain Amino Acid;分岐鎖アミノ酸))は、乳たんぱく(ホエイ、カゼイン)や大豆たんぱく(ソイ)[4]よりも豊富です。

プロテインリストイメージ
データ出典: Effect of protein/essential amino acids and resistance training on skeletal muscle hypertrophy: A case for whey protein [4] (コオロギの数値はFUTURENAUTの分析値)

LDLコレステロールを下げる脂肪酸

コオロギには、オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富です。これらには、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、血液中のLDLコレステロールを下げる効果があります[5]。特に、リノール酸はヒトの体内で作ることができない必須脂肪酸ですので、食事で摂取することが必要な栄養素です。

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豊富な食物繊維・ミネラル・ビタミン

コオロギに含まれる炭水化物のほとんどは食物繊維で、特に抗菌作用をもつ天然成分キチンが豊富です[6]。反対に、糖質はほとんど含まれません。食用クリケットは、ダイエットを邪魔しない栄養源といえます。

また、様々なミネラルも豊富に含まれます。貧血の予防に必要な鉄分、骨や歯を形成し筋肉収縮や細胞機能調節を担うカルシウム、体内の様々な酵素を正常に働かせるために必要な亜鉛が豊富に含まれるのが特徴です。鉄分と亜鉛は、肌細胞の再生をになう美肌ミネラルでもあります。

さらに、エネルギー代謝を担うビタミンB群も豊富に含まれます。特に、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1、脂質をエネルギーに変えるビタミンB2、たんぱく質の代謝に関与するビタミンB12が豊富に含まれるのが特徴です。

なぜ、これほどまでに様々な栄養素が豊富かつバランスよく含まれているのでしょうか?それは、食用昆虫が丸ごと食べられる「ホールフード」だからです。FAO(国連食糧農業機関)の報告書[7]で「スーパーフード」と書かれるほど、食用昆虫は栄養価と栄養バランスに優れた食品なのです。

スーパーフードイメージ

第4巻の出典

[1] Goutam R C et al. (2017), Ecosystem Services of Insects. Biomed J Sci & Tech Res, 1(2), BJSTR. MS.ID.000228.
[2] 文部科学省, 日本食品標準成分表2015年版(七訂).
[3] Bukkens S G F (2005), Insects in the human diet: nutritional aspects. In Paoletti M G ed. Ecological implications of minilivestock; role of rodents, frogs, snails, and insects for sustainable development, pp. 545-577. New Hampshire, Science Publishers.
[4] Hulmi J J et al. (2010), Effect of protein/essential amino acids and resistance training on skeletal muscle hypertrophy: A case for whey protein, Nutrition & Metabolism, 7(1):51
[5] 厚生労働省, e-ヘルスネット.
[6] Finke M D (2007), Estimate of chitin in raw whole insects. Zoo Biology, 26, 105-115.
[7] FAO(国際連合食糧農業機関), 世界の農林水産, No.847, 2017.


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