第1巻 人口と食料のはなし

「昆虫を食べる」ことについてどう思いますか?

コオロギライブラリー 昆虫を食べることについて

「ゲテモノ食いだ」、「ワイルドすぎる」、「グロテスクだ」・・・と思う方が多いかもしれません。食べたことがないものに対して、なんとなく抵抗を感じるのは普通のことです。

もともと、昆虫は世界の多くの国で、栄養価の高い食品として伝統的に食べられてきました。この「伝統食」が、「未来食」になるかもしれない・・・。こんなメッセージが国連の機関から発表されました。FAO(国際連合食糧農業機関)が2013年に発表した報告書[1]の中で、昆虫の食品としての利用可能性が検討され、「昆虫の食用利用は環境にも健康にも生活にもプラスの働きをもつ」とまとめられたのです。それ以来、昆虫は「次世代の食品」として、世界中で大きな注目を集めています。

Edible insects:Future prospects for food and feed security [1] (食べられる昆虫:食料と飼料の安全保障に向けた将来展望)Edible insects:Future prospects for food and feed security [1]
(食べられる昆虫:食料と飼料の安全保障に向けた将来展望)

食べたいものが何でも手に入るこの時代に、なぜ昆虫を食べる必要があるの?

食品ロスが問題になっているくらいだから、食べ物はあまっているんじゃないの?

世界人口と食料需要の関係を考えてみよう!

世界人口の推移と食料需要の展望

2020年時点で世界人口は77億人を超えました。国連の予測(World Population Prospects 2019 Highlights [2])によれば、2050年には世界人口は97億人に達すると見積もられています。これに伴い、2050年の世界の食料需要は2010年の1.7倍に増加すると予測[3]されていて、食料不足への不安は徐々に高まっていくと考えられています。

 

データ出典: World Population Prospects 2019 Highlights [2] (世界人口予測2019ハイライト)
データ出典: World Population Prospects 2019 Highlights [2]
(世界人口予測2019ハイライト)

 

私たち日本人が経験してきたように、経済が豊かになってくると食事が肉食化してくる傾向があります。これから人口増加が予測されているのは、今まさに経済が急成長している国々。食料の中でも、特に肉類(たんぱく質)の需要が急速に増加していくと考えられているのです。FAO(国際連合食糧農業機関)が2012年に発表した報告書(World agriculture towards 2030/2050 [4])によれば、2050年の世界の肉類の需要は、2005~2007年の1.8倍に増加すると予測されています。

 

データ出典: World agriculture towards 2030/2050 [4](世界の農業の展望2030/2050)
データ出典: World agriculture towards 2030/2050 [4]
(世界の農業の展望2030/2050)

食料不足と食品ロス

「食料不足を心配する前に、食品ロスを減らすべきだ」・・・この主張はもっともです。食品ロスとは、「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」を指し、日本では年間約600万トンのロスが発生しています[5]。これを国民1人当たりに換算すると年間47kg、毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと同じ量になるそうです。飢餓が発生するのは食料不足だからではなく、食料の分配に問題があるという指摘にも説得力があります。食品ロスを減らすことは、すぐにでも取り組むべき課題です。

 

食品ロスを減らす

 

その一方で、世界人口が増加し、経済的な豊かさの向上とともに肉類を食べる人が増えていることも事実です。人間の体内で合成できない必須アミノ酸は、動物性たんぱく質を含む食事から摂取しなければならないため、世界人口の増加に合わせてたんぱく質の生産を増やすことは、食品ロスを減らすことと同様に重要な課題といえます。これを、持続可能な方法で実現しなければならないところに大きな課題があります。昆虫はたんぱく質が豊富であることに加えて、養殖時の環境負荷が小さいことから、次世代のたんぱく源として注目されているのです。
食品ロスの削減と、食料生産の拡大は、車の両輪のような関係です。両輪が一緒に駆動することによって、21世紀の食料問題は解決に向かって前進できるのではないでしょうか。

 

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第1巻の出典

 

[1] FAO(国際連合食糧農業機関), Edible insects:Future prospects for food and feed security, 2013.
[2] UN(国際連合), World Population Prospects 2019 Highlights, 2019.
[3] 農林水産省, 2050年における世界の食料需給見通し-世界の超長期食料需給予測システムによる予測結果-, 2019.
[4] FAO(国際連合食糧農業機関), World agriculture towards 2030/2050, 2012.
[5] 農林水産省, 食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢, 2011.


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